線形代数をゼロから勉強する方法とお勧めの参考書

 線形代数をゼロから勉強したいと思っている人は多いと思います。高校を卒業したばかりで大学に入る前に先取りしたい学生、数学を勉強し直したいエンジニアやマーケター、データ解析や機械学習の分野に参入する前に前提となる基礎を身に着けたい人、その他科学的な分野に関わる人であれば、微分積分とともに、線形代数をある程度操れるというのは必須スキルですね。
 この記事ではお勧めの順番で教材を紹介していきます。前提としているのは高校レベルのベクトルだけですが、それすら経験がなくても勉強できるよう、入門を意識したテキストを紹介していきます。

スバラシク実力がつくと評判の線形代数 キャンパス・ゼミ

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 大学入学後の線形代数の授業レベル。一通り基本的なことがまとまっており、初めて線形代数を学習する際には非常に良い参考書だと思います。マセマシリーズに共通することですが、解説が一歩一歩丁寧に書いてありますので、楽しく学習できる構成です。最初はランクの考え方や固有値固有ベクトルの意味がいまいちピンと来ないところもあります。しかしそれでも言われたとおりに計算していると段々と理解が深まります。深まったら今度は説明や証明を再度読んでみるのも良いでしょう。第4版が出版され、その人気の高さが伺えます。
 内容を詳しく紹介します。第1章(ベクトルと空間座標の基本)と第2章(行列)は、高校数学にプラスαという内容。平面の方程式、逆行列、転置行列、ケーリー・ハミルトンなどを学んでいきます。第3章(行列式)と第4章(連立一次方程式)は少し本格的になります。サラスの公式、行列式、余因子行列、ランクなどの話が出てきます。手を動かしながら読み進めていけば、1、2章の延長として理解しやすいでしょう。第5章(線形空間(ベクトル空間))と第6章(線形写像)では、スラスラ読み進められるのですが、初めて学習するときは読み終わっても、あまり腑に落ちないかもしれません。第7章(行列の対角化)では固有値固有ベクトル、対角化、シュミットの正規直交化法など重要な話が出てきます。ユニタリ、エルミート行列なども登場し、盛りだくさんなのにもかかわらず練習問題が少ないかもしれません。2冊目に紹介するマセマの演習本でもしっかり練習するのが良いでしょう。第8章(ジョルダン標準形)ではジョルダン細胞、ジョルダン標準形を学びます。3次正方行列まで学びます。証明がわかりやすく書いてありますので、しっかりと読むと良いと思います。

スバラシク実力がつくと評判の演習線形代数 キャンパス・ゼミ

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 マセマ線形代数が終われば、次はマセマ演習線形代数ですね。構成は同じで、説明部分が短くなり、問題練習部分が多くなります。問題練習のレベルが僅かに上がりますので、無理なく、実力アップができます。線形代数の場合は3×3や4×4の行列を行うと計算用紙を多く使いますが、ケチらずどんどんペンを動かし、頑張って計算しましょう。実際に行列を足したりかけたり、逆行列を計算したりしないことには理解は深まりません。また計算間違いをし易い分野でもありますので、そこで変にストレスを溜めないように気をつけましょう。
 各章の内容は、第1章:ベクトルと空間座標の基本、第2章:行列、第3章:行列式、第4章:連立1次方程式、第5章:線形空間(ベクトル空間)、第6章:線形写像、第7章:行列の対角化、第8章:ジョルダン標準形

キーポイント線形代数

 キーポイントシリーズもマセマシリーズと同様に人気があります。線形代数については、マセマ→マセマ演習→キーポイントの順番がオススメです。線形代数の勉強では計算量が多く面倒ですので、計算ばかりに時間がかかってしまい、あまりランク、線形変換、行列式の意味や背景についてまで頭が回りづらいところがあります。この本ではそういった面を強化してくれる効果があり、大変にお勧めです。具体例を多く用いながらわかりやすく説明されている箇所が多いと思います。マセマでゴリゴリと計算問題を解いたが、あまり腑に落ちないな、と言った気持ちをもった段階で読むのがいいですね。
 内容をまとめると、ポイント1:ガウスの消去法はオールマイティー、ポイント2:行列式のでどころ、ポイント3:逆行列は逆数の行列版、ポイント4:ベクトル空間に慣れよう、ポイント5:線形変換とその役割、ポイント6:ランクの定義はどれでも同じ、ポイント7:線形代数の基本定理とは、ポイント8:固有値の意味をつかむ、ポイント9:行列を対角化する、ポイント10:ジョルダン標準形は最後の切り札です。

基礎からの線形代数

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 こちらは2014年出版の比較的新しい本です。タイトルに「基礎からの」とありますが、初学者向けではありません。線形代数の入門書を1,2冊終えた人向けだと思います。
 マセマ本などを読み通したあとに、もう少ししっかりと学びたい、というモチベーションがあればチャレンジしてみるのも良いかもしれません。様々な定理・命題・補題・系を証明していく構成になっており、証明力がつくことが期待できます。私は気になる証明だけを読むという辞書的な使い方をしました。逆に練習問題は少なめですので、計算力を付けたい人はマセマ演習などのほうがオススメです。
 面白かったのは、行列の対角化のところではGoogleページランクの仕組みを紹介しているところです。その簡単な例として、ウェブ上には4サイトしか存在しないと仮定した場合の分析が書いてあります。数学の参考書で実世界への応用例が紹介されているのは珍しいですね。

演習 線形代数

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 最後に紹介するこちらの本は昭和53年出版。基本・入門書のあとに、さらに理解を深めること、もしくは試験対策を行いたい場合に向いているのではないでしょうか。たくさんの練習問題を説いているうちに、納得感も深まってくると思います。この本ではdet{A} * det{B} = det{AB}や関数の内積のように、マセマ等には出てこない話が多く出てきますので、楽しみながら学習できました。例題だけでも時間がかかりますので、重要な部分や苦手な部分だけ問題にも手を出しました。例題数は、行列と行列式が48、平面および空間の幾何学が29、線形空間が53、2次形式とエルミート形式が14問です。